top of page

なめし(鞣し)後編

こんにちは。工場長の坂本です。


最近、忙しくてブログをサボってしまいましたが、「忙しいのを言い訳にするな」と自分を鼓舞しながらゆる~く更新していきます。

さて前回は「なめし(鞣し)編」に引き続き、今回は、「なめし(鞣し)後編」について深掘りしたお話しをさせていただこうかと思ってます。



フィッシュレザーの鞣し方法


Ocean Leatherでは、植物タンニン鞣しと合成タンニン鞣しの2種類で製造しています。

その2種類の鞣しについてお話しさせていただきます。


まず、なぜ植物タンニン鞣しと合成タンニン鞣し2種類の革を製造しているかと言うと、どちらも鞣し方法には長所・短所があり、それによって革の物性や仕上がりが変わるのでお客様の選択肢の幅を広げるために製造しています。


物性は説明も難しいので置いといて・・・

簡単な違いとしては色味ですかね。


植物タンニン鞣しの革は鞣し終了後の色味は茶色になります。

革の下地の色が茶色に加え加脂・染色工程で加脂剤は黒色~茶色の加脂を使用しているので、どんな色で染色しても染料の%を少なくしても濃い色味になりやすいです。

このことから植物タンニン鞣しの革は、暖色系は濃くいい色味ですが、寒色系も濃い色味になりやすいですね。


それを解消してくれるのが、合成タンニン鞣し革です。

合成タンニンで鞣すと下地が白色に加え加脂剤も白色なので、暖色・寒色系でも薄く淡くなり、世間一般でいう綺麗なパステルカラーに仕上がります。

このことから植物タンニン鞣しと合成タンニン鞣し革の2種類で製造しています。

植物タンニン鞣しのマダイレザー
植物タンニン鞣し革
合成タンニン鞣しのブリレザー
合成タンニン鞣し革


植物タンニン鞣し


使用する材料として、「水」・「塩」・「鞣剤(合成タンニン・植物タンニン)」・「ギ酸やクエン酸」・「加脂剤」を使用します。

なぜ、「塩」を使うかと言うと、タンニン(鞣剤)やギ酸やクエン酸のPhが酸性の薬品を入れると皮が酸膨潤して溶けます。

塩を使用することで酸膨潤を抑制でき、更にタンニンの浸透を促進させる為ですね。

植物タンニン鞣しの「鞣剤」は、合成タンニンと植物タンニン(ミモザ)を使用しています。


なぜ、植物タンニン鞣しなのに植物タンニン(フルタンニン鞣し)だけでは無く、合成タンニンを使用しているかと言うと、植物タンニン鞣しでもフルタン(フルタンニン鞣し)で製造すると染色時の色味が濃い色しか出せなくなったり、経年変化がかなり早く、前回の「なめし(鞣し)前編」で説明した合成タンニンの特徴の「耐光性に優れている」事から、補助剤として合成タンニンを使用する事で色味を抑え、更にフルタンより少し経年変化を遅らせることができます。 全部完璧な鞣剤は無いので複数の鞣剤を使用して、鞣剤の長所を掛け合わせているんですね。


使用材料としては「皮」・「水」・「塩」・「合成タンニン」・「植物タンニン」を用意します。

水に塩を入れ塩水を作り、塩水に皮を投入します。

その後に合成タンニン・植物タンニンの順番で毎日1回タンニンを入れて、大体1週間程度鞣しを行います。

植物タンニン鞣し
植物タンニン鞣し

最初は、薄い濃度から最終的には濃い濃度にしていきます。

最初から濃い濃度にしてしまうと、タンニンが皮の表面に吸着してタンニンの浸透を阻害して皮の中まで鞣されず硬い仕上がりなります。


薄い濃度でタンニンが皮の中まで浸透して、濃い濃度で皮の表面にタンニンが吸着することで、柔らかく厚みのある革ができるんです。

そしてタンニンを入れると同時に「ギ酸やクエン酸で」Ph調整も行います。 最後に保存の為に少量の加脂剤を加えて乾燥させます。


この状態の総称を「クラストレザー」と呼びます。簡単に言えば染色前の革ですね。

次に合成タンニン鞣しについて説明します。



合成タンニン鞣し


使用材料として「水」・「塩」・「鞣剤(合成タンニン)」・「補助鞣剤」・「ギ酸やクエン酸」・「加脂剤」を使用します。

合成タンニンは、植物タンニンより鞣し力が弱いです。なので、合成タンニン単体だけで鞣すと扁平な硬い仕上がりになりやすいです。

もちろん耐光性に優れたり、経年変化が遅い、品質が安定しているなど、長所はあるんですが、鞣し力が弱いという短所も持ち合わせているんですね。

そのことから「前鞣し」と言われるんですが、合成タンニンで鞣す前に「補助鞣剤」で鞣すことが多いですね。

合成タンニン鞣し
合成タンニン鞣し

補助鞣剤には、色々と種類があって、その補助鞣剤によって長所や短所があり、例えば伸びや膨らみを出す物もあったりするので補助鞣剤で前鞣しを行い、次に合成タンニンで鞣すことによって少し伸びや膨らみのある柔らかい革に仕上げることができます。 タンナーさんなり消費者がどんな革を求めているかによって、仕上がりは変わりますね。


最後になりますが、今回はあくまでOcean Leatherの鞣し方法の紹介であって、鞣す行為は一緒でもタンナーさんによって使う鞣剤(タンニン・補助鞣剤)が違ったり、処方も違うのでご了承ください。


次回は、染色・塗装工程を深掘りした内容をお送りいたします。












コメント


bottom of page