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フィッシュレザーの特徴

  • 執筆者の写真: Boss
    Boss
  • 8月26日
  • 読了時間: 6分

こんにちは。

開発担当の高橋です。


最近は暑い日が多いですね。フィッシュレザー作りは暑い日はなかなか苦労するものです。蛇口から水を飲もうと思うと「熱っ」。井戸水や地下水であれば年中温度が20度前後で一定なんですが、水道水は夏の気温にさらされすぐに熱くなるんです。魚の皮は生の状態では温度に弱いので、水温が25度を超えてくると一旦冷やしてあげないと皮が熱によるダメージを受けるんです。

開発当初はこの水温のせいで夏場によく製造を失敗していました。(原因が温度だと分かるまで1年半程かかりました。)

今は、水を冷やす機械や大きな冷蔵庫も導入しているので安心です。


今日は、フィッシュレザーの特徴についてお話しできればと思います。

目次

ウロコ模様と手触り 強度 サステナビリティ

におい


・ウロコ模様と手触り

この手触りはもっともこだわっている箇所の1つで、ウロコ模様の凹凸感を残しつつ滑らかに仕上げています。鞣し加工後のフィッシュレザーはまだウロコ模様の毛羽立ちがあり質感もザラザラしています。

塗装前のけば立ったマダイ革
塗装前の毛羽立ったマダイ革

このままだと革が汚れや水などに直接触れてしまうため汚れやすかったり色移りしやすい状態です。革製品は身近にあり数年間使用し続けるものなので、手触りを良くするため、防汚性や防水性を向上させるために塗装を施します。

塗装作業の様子
塗装作業の様子

塗装は最も時間と手間のかかる工程です。

少しづつ塗料を塗布し、それを何度も行う事により、滑らかで凹凸感のある仕上がりになります。


ブリシイラ

ブリの鱗模様は細かく繊細です。側線と呼ばれる魚が水の流れをとらえる感覚器官が特徴です。この側線の特徴を活かすため、側線部分のみ鱗を残した状態で加工しています。手触りは微細な凹凸感のある滑らかな手触りです。フィッシュレザーの中では最も平滑で凹凸感の少ない滑らかな手触りです。

ブリ革
ブリ革
シイラ革
シイラ革

マダイ

マダイの鱗模様は大きく魚らしい模様です。滑らかで凹凸感の大きい手触りです。フィッシュレザーの中で最も凹凸感の大きい手触りです。鱗模様はウロコのポケット部は色味が薄く、外周部分は色味が濃く出るためグラデーションのようになっており、更にマダイの鱗模様を引き立たせています。

真鯛革
マダイ革

アトランティックサーモン

サーモンの鱗模様はブリよりも大きくマダイよりも小さい、中程度の鱗模様です。フィッシュレザーの中で最も均一かつ綺麗な菱形の鱗模様で手触りも少し凹凸感があり滑らかです。

サーモン革
アトランティックサーモン革

チョウザメ

チョウザメは他の魚種と異なり鱗が皮膚と一体化しておりウロコを除去することなくそのまま革にしています。鱗は細長い菱形のような形で魚体の真横を一直線に頭から尾まで続いています。手触りはサメ特有の細かな鱗のザラツキを無くし、滑らかな質感にしています。体の中心を通る大きな鱗は凹凸感を残し、滑らかに仕上げています。



チョウザメ革
チョウザメ革

・強度

意外なことにフィッシュレザーの強度は非常に高いです。

お風呂やプールに数十分浸かっていると手がふやけてきませんか?

お風呂に入った後、シワシワになった皮膚
お風呂に入った後、シワシワになった皮膚

ある日ふと、「魚はずっと水の中にいるのに何でふやけないんだろう」と不思議に思い調べたことがあります。皮膚構造が人や陸上生物と異なるため魚は水に浸かり続けてもふやけないそうです。生物が水の中にずっといると水分が皮膚から入ってきて体内の水分量が多くなりミネラルや血液などが薄まり体に必要なミネラルや栄養素が薄まるそうです。逆に、海水中に浸かり続けると海水中の塩分が浸透圧により体から水分を奪おうと働き血液などの濃度が濃くなりすぎてしまうそうです。魚はそういった水の侵入による体液の薄まりや海水による体内水分の減少に対抗するため皮膚の構造が陸上生物より緻密になっています。

魚の皮膚は繊維構造が緻密になっているのに加えて、皮膚の中に油脂分を多く含むことにより体外の水や海水からの影響を少なくしています。(さらに鱗も装備し、体表にはヌメヌメとした保護膜があるのでそれらが水や海水から身を守っている。)

魚の繊維構造は非常にシンプルで無数のコラーゲン繊維が十字(X)に、クロスするように絡み合っています。またそれがミルフィーユのように何層にも重なっており、非常に高い引張強度を生み出しています。


逆に牛革など陸上生物は体内の温度上昇を防ぐために汗を出す必要があります。そのため皮膚には毛穴や汗腺など無数の空洞がありスポンジのようになっています。そのため、薄くした場合に破れなどが起きたりします。

ただ、加工方法や厚みなどにより大きく強度は変わります。魚の皮も引張強度は非常に高いですが、はさみやナイフなどの切り傷には非常に弱いです。逆に牛革は切り傷などには非常に強い特徴があります。


・サステナビリティ

魚の革は牛革などと比べて環境にやさしい特徴があります。なぜかというと、魚の皮は薄く軽いため同一面積単位で比べると牛革の製造時よりも水や薬品の使用量が少ないため環境負荷が少ないです。また、牛革など哺乳類は毛がありますが、その毛の除去には硫化ナトリウムなどの非常に強い薬剤が使用されますが魚は毛が無いためその分負荷は低いです。また、その毛は硫化ナトリウムにより溶かして除去されるためその排液は非常に汚濁されています。例えるなら、お風呂場の排水溝に髪の毛を取っていると少しヌメヌメしていませんか?実はお風呂場の排水溝の髪の毛にヌメリがあるのはボディーソープなどのアルカリ分により毛が少し溶けているからです。排水溝程の毛の量であれば問題ありませんが、牛の皮となると毛がびっしりありそれを全て溶かすと汚濁は凄まじいです。

ただ、牛革と比べて魚革は環境にやさしいですが、皮そのものは牛革でもフィッシュレザーでも同じく食肉の副産物として生まれるもののためどちらも環境にやさしいと言えます。

植物タンニン鞣しの様子
植物タンニン鞣しの様子

・におい

魚の革というと「魚臭くないんですか?」とほぼ100%聞かれます。

生の魚の皮
生の魚の皮

「魚臭くはありません!」

魚の独特の匂いは体表のヌメリや魚に含まれる油脂分が大きく関係してきます。魚の皮には多くの油脂分が含まれておりそれが魚臭さの原因となります。サバの塩焼きなどを焼いた際に皮から脂がにじみ出てきたりすると思います。それは焼かれることにより皮の構造が壊れて油脂が染み出てくる現象です。


具体的には、牛の皮など哺乳類だと皮中に含まれる油脂分は数%~15%前後ですが、魚の皮は15%~25%です。また、牛の皮だと油脂分自体はそれほど臭わないためその油脂を全て除去する必要性はありませんが、魚の場合は全て除去しないと魚臭さが残ります。魚革の製造で難しいポイントの1つです。Ocean Leatherでは1週間程かけてじっくりと魚の油脂分を取り除いているため魚臭さはありません。

脱脂中の魚の皮
脱脂中の魚の皮

本来は、違う話題でもう少し専門的な内容を書くつもりでしたが「そういえばフィッシュレザーについて細かく話してないな」と思いだし今回はフィッシュレザーの特徴について書かせていただきました。

こんな記事書いて欲しい、こんなこと知りたいなどありましたらコメントなどで教えてください。毎度ブログ記事を書くたびにネタに悩むので、ネタを提供してもらえれば非常に嬉しいです。






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